terry's River Side Bar

Travel of baton relay <episode 7 Letter to friends>

バトンリレーに参加してくれた皆さん、お元気ですか?
ボクの3月の釣行から始まったフライロッドが全国を釣り歩くバトンリレーで、各月毎に色んな場所で様々なドラマがありましたね。毎月、皆さんから送られてくるお便りがとても楽しみでした。

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さて、9月いっぱいで禁漁を迎える本州の2008年の渓流シーズン。そこでラストとなる9月は、バトンリレー走者の皆さんと渓魚の魂が宿ったこのロッドで、締めくくりにふさわしいフライフィッシングの旅をしようと考えていました。しかし9月の休日は、思い通りにフィールドへ出かけるコトができず、しかも、やっとの思いで出かけた先では、思いもよらぬ結末が待っていました・・・。

バトンリレー最後の出来事
久し振りにボクの元に戻って来たグラスファイバー製のロッド。このロッドとラストステージとして訪れたのは、このロッドを使って初めて渓魚を手にした里川。やはり、最初と最後はボクのお気に入りの流れがイイ。
グラファイトとは違うグラスファイバー特有の優しい感触を確かめるため、支度を素早く済ませ川原を駆けるように下りました。ラインをガイドに通す前に、繋いだロッドを何度か試し振りをするとフェルールからだろうか、妙な違和感を感じました。
なんと表現すれば良いのか判らないのだけど、ロッドがしなる度に僅かなガタツキ感が手元に伝わる。でも継ぎ目が正確に出るようにフェルールに付けたドットマークに合わせて繋ぎ合わせてあるし、3ピースのフェルール2箇所とも、しっかりと差し込まれている・・・しかし、組んだばかりの頃には感じなかったガタツキ感がグリップを通して伝わっていました。
ボクの手元から旅立ち、5ヶ月の間に日本各地を回り、様々な渓魚との格闘をしたのだから、ちょっとロッドにも疲れが出ているのかもしれない・・・そう思い、取りあえずは実際に使ってみながら、様子をみようと川を歩きはじめました。

リールからラインを引き出して二つ折りにしたラインをガイドに通し、リーダーとティペットを継ぎ足して、6Xのティペットにはエルクヘアカディスを結ぶ。フックベントを親指と人差し指で覆うようにして毛鉤を摘み、シュッシュッとスプレー式のフロータントを施して、フォルスキャスト。そしてソフト・プレゼンテーション。狙いは、落ち込み寸前の肩の部分。ボクが先ず始めに狙うポイントです。

毛鉤を先行させるために、ティペットを逆U字状に整え、わざとターンオーバーしないようロッドのコントロールをする。ループの形をそのまま活かし、毛鉤を水面上に軟着水させると、大きな口を開けたイワナが、水面をモコッと盛り上げてレーンに乗った毛鉤を吸い込むのが見えました。そして、水の中へと消えたコトも確認して、ヨシッ!っと声を上げてロッドを立てると、ロッドにドスンッと大きなショックが伝わって来ます。7ftのロッドがバッドまで曲がり、久し振りの強烈なファイトが始まりました。目の前で水飛沫を上げた相手は、久し振りの大物。少々焦りながらも、ロッドを握る手に力が入りました。ラインが水面に引込まれ、立てたロッドからグングンッと水中でイワナが首を振る様子も伝わってきます。

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すると、“メシャッ”という鈍い音がロッドから聞こえたのです。
同時に・・・水中に突き刺さるように張っていたラインは弛み、右手に握ったロッドから強烈なファイトが突然消えました。奇妙な“メシャッ”と言う音が聞こえてからの一瞬の出来事に、ボクは自分に起こったこの悲劇を理解するのに相当な時間が掛かりました。ボクは呆然として、しばらく流れの中に立ちすくんでいました。

ファイト中に折れたロッドを右手に握りながら。

自分の気持ちを落ち着かせようとタバコを取り出し、赤いレザーケースに入ったZippoの蓋をカチャリと開け、シュボッと音を立てて火を起こし、メンソールを吸い込む。そして右手に握られた折れたロッドを見ると、スリーピースのトップ側♀のフェルールの上部が潰れるようにして折れていました。

それにしても、ボクから始まったバトンリレーがこんな形でボクの元で終わりを迎えるとは、全く想像出来ませんでした。このロッドを握った友人たちの魂が宿っているはずだったのに。Batonと言う名のロッドで繋がった友人たちとの楽しいバトンリレーだったのに・・・こんなふうにして終わってしまうとは・・・なんとも複雑な心境です。
でも、考えようによっては、魚との格闘でフライロッドとしての生涯に終止符を打ったのだから、このBatonと言う名のロッドもロッド冥利に尽きる終わり方なのかもしれませんね。また来るべき機会がやって来たら、修理してみたいと思います。このロッドをこのままの状態にしておくのは、とても忍びない。ブランクの修理は無理だと思いますが、各パーツを一度取り外して、新しいブランクと一緒に組み直そうと考えています。そうすることで、皆さんの魂が新しいロッドにも吹き込まれるような気がするから。
その時はまた、バトンリレーをしてみようかな・・・なんて、考えたりして。

ボクのちょっとした思いつきで始めた
フライロッドを使ったバトンリレーにお付き合いいただいた皆さん
本当にありがとうございました。この場を借りて、お礼を申し上げます。
次回はフィールドで一緒にロッドを振りたいですね。

では、いつか何処かでお会いしましょう。

2009年 9月某日 terry's FlyFishing Bar店主より

by terry_ffb2 | 2008-09-15 00:15
by tokyo_terry | 2008-09-23 09:28 | ☆Fly Baton Relay☆