Gliding
キャストをしたフライラインが流されるほど。
思い通りの軌跡を描けないほど、風の強い日だった。
左手でホールを入れ、ラインスピードを上げても
リーダー、ティペットの先に結ばれた毛鉤は
狙っているスポットに着水させるのが難しかった。
稀に狙っている場所に毛鉤を着水させても
フライラインが流れに揉まれて、アッという間にドラッグが掛かる。
メンディングを入れようとしてフライラインを持ち上げれば
今度は強く吹く風に持ち上げられ、毛鉤は上流に向かって水面を滑る。
何もかも、全く思い通りにならない。
僅かな距離しか歩いていないのに、こんな日はドッと疲れてしまう。
ポケットから緑色のパッケージのタバコを取り出し
風を避けるように風下に向かいジッポーをカチャリ。
ふぅッと息を吐き、どんよりと曇った鈍色の空を見上げると
大きな鳥がソアリングしていた。
大きく翼を広げ、気流を上手く捉えて滑空している。
シルエットから、猛禽類だろう。
視力の良い鳥だから、空を飛びながら
地上の獲物を探しているのかな。
いや、もしかしたらボクの下手クソなキャストを見て
面白がっているのかもしれない。
クルクルと何度かボクの頭上を飛び回っていたから
そんな風に見えてしまう。
風の強い日だった。
by terry_ffb2 | 2008-04-20 17:14